■【指定管理者】指定管理者公募の現状と今後の課題~“収益型産業振興施設”を中心に~<トンパ文字添付>
◆このままでいいのか、“収益型産業振興施設”の指定管理者公募の選定(審査)内容
▼指定管理者制度導入の現状
地方自治法が改正されて、①経営の効率化(主として経費の縮減)と②質の高いサービスの提供を目指し、すべての公の施設について2006年9月1日までに直営か民間企業等も含めた指定管理者制度への移行に切り替えられました。(その間、経過措置期間が03年9月2日から3年間設けられていました)
昨年1月に発表された「公の指定管理者制度の導入状況に関する調査」(総務省自治行政局)によると、全国の自治体で指定管理者制度が導入されている施設の数は、61,565施設(調査時点2006年9月2日)となっています。
その内訳は、都道府県7,083施設、指定都市5,540施設、市区町村48,942施設です。 一方、公募により指定管理者を選定したのは、都道府県の施設が51.2%、指定都市の施設が13.8%、市区町村の施設が23.7%、全体では29.1%となっています。
民間企業等が指定管理者に選定されたのは、都道府県の施設で11.6%、指定都市13.8%、市区町村19.8%、全体で18.3%と約2割弱です。 民間企業等の内訳は、株式会社・有限会社11.0%、NPO法人1.7%、その他(企業体、医療法人、学校法人等)5.6%です。 民間企業・団体はまだ少ないです。
なお、前述の総務省調査では公募施設を次の5分野に分類しています。 5分野とは、①レクリェーション・スポーツ施設、②産業振興施設、③基盤施設、④文化施設、⑤社会福祉施設です。
この分野に私は⑥収益型産業振興施設(農林水産物直売所、道の駅物産館・レストラン、温浴、宿泊、その他の観光事業)を別に加えることにしています。
その理由は、これら収益型施設は利用者の買い物、受益サービス等の対価として、日々現金で収益が見込め、しかも多額な年間収入になります。 そのため私は総務省の5分野から分離して「収益型産業振興施設」にした訳です。 なお、私は収益型産業振興施設の応募指導や公募選定(審査)を最も得意としています。
▼3年間で企業等の指定管理者応募コンサル活動及び自治体の公募選定(審査)委員就任を経験して
私は1980年前後から農産物直売所、物販、レストラン、温浴、宿泊、観光事業等の“公の施設”を運営する自治体の外郭団体(公益法人)や第3セクター(株式会社)等の開設、運営や診断、指導に携わりました。
一方、1993年度から全国展開した「道の駅」(当時の建設省登録)の開設、運営や診断、指導に携わるなど、現在の指定管理者施設の中では一般に施設経営についての難易度の高い、“収益型産業振興施設”の管理・運営指導に約30年間関わって来ました。
そのため、公の施設に指定管理者制度が導入された現在も、主にこれら収益型産業振興施設の指定管理者に応募する企業やNPO法人等が応募する際にコンサルや助言を行っています。
一方、自治体からの依頼により選定(審査)委員を務めるなど、応募側、選定側の双方に関わっています。 ただし、同一事案に関して応募側、選定側双方に関与することはありません。
これまで約3年間の指定管理者応募のコンサルで特に印象深いのは、03年度に新規参入企業が「日帰り温浴施設」の選定(管理代行)を獲得した事案です。
本事案は施設整備、管理運営とも民間の活力最大限に生かした、プロポザール方式を自治体が導入しました。 開業当初は年間15万人の入浴利用客を見込んでいましたが、オープン半年で既に10万人を突破し、その後も利用客が増えています。
04年度からの自治体選定委員就任では主に道の駅物産館・レストラン施設の審査、宿泊・温浴施設や日帰り温浴施設の審査などに関わりました。 特に指定管理者制度導入以前から現在まで私が長年にわたり診断・指導してきた第3セクター(株式会社)、公益法人(財団法人)形態施設の選定(審査)が特に印象に残っています。
▼企業、団体の中間支援組織における指定管理者応募支援の動き
今年度からO市の商工団体中間支援組織と同じ市内のNPO中間支援組織とがタイアップして、各傘下の企業、団体を対象にして指定管理者応募のための合同勉強会「公共領域ビジネス研究会」が発足しました。
私は3年前からそのNPO中間支援組織認定コンサルとして、これまでNPO法人に指定管理者応募への啓発、応募指導をしてきた関係で、4、5、6月各1回の研究会に参加しました。 企業側、NPO側とも、これまで合同で指定管理者応募のための研究会を開催したのは初めてで有意義な研究会でした。
今後は、企業とNPOとの協働による指定管理者応募による選定獲得が望まれます。 以前から、私もその方向で企業、NPO団体の応募指導をしています。
▼特に求められる指定管理者公募の際の収支計画書の内容改善や資金繰り表の提出
これまで3年余りの間、企業・NPO側や自治体側双方の立場から、指定管理者施設の事業計画書、収支計画書(収支予算書)等の策定指導、選定(審査)に携わってきました。
約4年前から私が出会った収益型産業振興施設担当の自治体職員の中で、企業経営、企業財務の実務に精通している人は殆ど見当たりません。 そのため、民間から経営コンサルタント、公認会計士等の専門家を選定(審査)委員に加えなければ、事業計画書、収支計画書等の経営分析による的確な審査は本来不可能です。
なお、企業本来の経営分析は財務諸表(貸借対照表、損益計算書)を分析することで、企業の財政状態と経営成績を一目瞭然に把握することができます。 しかし、指定管理者制度では企業の損益計算書(1事業年度全体の収益、費用、利益の要約)に相当する、簡略化した収支計画書だけの提出を求めています。 一方、企業の貸借対照表(1事業年度全体の資産、負債、資本の要約)に相当する書類の提出は求めていません。
それだけに、経営コンサルタントとしての自治体選定(審査)委員の立場からは、収益型産業振興施設の公募審査では収支計画書の内容充実等が必要です。
【収益型産業振興施設の公募収支計画書は、公募施設の現行「損益計算書」様式に準じ、さらに資金繰表の提出を求める】
≪事業内容に適応した支出科目の細分化が必要≫
現在多くの自治体で制定している指定管理者公募の収支計画書について、事業の規模や特殊性を考慮せずに一律の簡易な様式となっています。 例えば、 ある自治体の収支計画書様式では、支出内訳は①人件費、②事務費、③事業費、④管理費の大雑把な4科目だけで合計しています。
この支出科目の分類では、支出科目が複雑多岐にわたる収益型産業振興施設の費用内訳が明確になりません。 例えば、飲食、温浴事業は水道光熱費が多額にかかりますが、わずか4分類では水道光熱費の金額は不明です。 また、収益型産業振興施設は売上収入に仕入れや製造の原価がかかります。 しかし、現在自治体の例示する様式に「原価」の科目記載は殆ど見当たりません。 これでは収益型産業振興施設の厳密な収支予算書になりません。
当面、私は現在の指定管理者候補施設の直近決算書(予算書)の費用科目を収支計画書の指定様式に用いるよう、自治体担当者に改善を指導、助言しています。 そうすれば、公募施設の過去の決算書、現行予算書と公募収支計画書との整合が的確にでき、様式統一で応募企業同士の計画書相互比較が適切にできます。
ある自治体の募集要項に「収支計画書は貴社の様式でご作成ください」との文言を見受けましたが、これでは整合性が乏しく相互比較に時間がかかり、審査には“百害あって一利なし”です。 将来的には、収益型産業振興施設版「収支計画書」の統一様式が望まれます。
≪資金繰表の提出≫
資金繰表(指定管理者では主に運転資金計画表)は、これまで私の知る限り指定管理者の申請書類に含まれていません。 しかし、事業規模が大きい収益型産業振興施設の資金繰り状態を的確に知るために、最低限初年度分だけでも月別資金繰表の提出を求めるべきです。
既に、ある自治体では指定管理者に選定され施設を管理代行していた企業が営業を停止して会社を解散という事態となり、指定管理者を返上した事例が発生しています。 “勘定合って銭足らず”を防ぐためにも、自治体は収支予算書の資金繰りの審査が不可欠です。
よく言われる“オリンピックは参加することに意義がある”は、指定管理者応募には通用しません。 指定管理者の応募では単に参加するだけでなく、“選定を獲得して勝者(管理代行者)になる”がゴールです。

【象形文字の説明】 中国雲南省ナシ族が昔から祭祀などに用いているトンパ文字(収録2,160字)で「勝利者」を意味します。
《出典》王超鷹著『トンパ文字』-生きているもう1つの象形文字-(マール社)
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